ギター・ブルース

●シルヴェスター・ウィーヴァー『ギター・ブルース』<オーケー/Pヴァイン>(99)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/53C100618704

※本文を書くに当たり、小出斉さんのライナーを大いに参考にしています。

オリジナル録音は23〜27年。「ギター・ブルース」ってえらくアッサリしたタイトルに思えるが、録音物として登場したばかりの”クラシック・ブルース”期で、ギターのみをバックにしているものは、彼が弾いた曲が最初らしい。つまり当時としては画期的なタイトルだったのだ。誰のバックかというと、サラ・マーティン。当然彼女の名義なのだが、宣伝広告ではウィーヴァーのテクニックもセールスポイントとして強調されている。

サラとの2回目の録音時にソロ曲も吹き込み、それが?「ギター・ブルース」と?「ギター・ラグ」である。非常にまったりとした雰囲気で、「ラグ」も、ブラインド・ブレイクみたいな超絶技巧はなく、牧歌的な感触。ただ、ギター音の特色である温かみや哀愁は十分感じ取れ、ここがギターを使ったブルースの発祥と言われれば納得がいく。?「アイム・ビジー・アンド・ユー・カム・イン」などは悲しみの背後で楽しく跳ねるようなリフが聴け、「ラグ」ならではの魅力が濃く出ている。

宣伝広告で絶賛された?「ローミン・ブルース」。聴き取りにくい部分もあるが、力強いリフから味のあるナチュラル・スライドが印象的。ピアノやジャズ・バンドによるバックが常識だった時代を考えると、その後発達するギター中心のブルースの萌芽を確かに感じる。最初は「まぁ、普通だな」と思うが、それは今の時代の感覚だからだろう。

彼のヴォーカルは?「プア・ボーイ・ブルース」などで聴ける。きわめて真っ直ぐな歌い方がギターのフィーリングと合致している。

?「ダムファイノ・スタンプ」ではバンジョー演奏を披露。明るい曲調だが、細かい部分の音まで力強く弾かれていて聴き惚れる。

14歳のヘレン・ヒュームズも登場。彼女を見い出しフォローしたのがウィーヴァーだった。ヘレンの感謝の言もライナーに記載されている。ヘレンと言えば「ビー・ババ・リバ」に代表されるキュートな歌声が魅力だが、ここでのヘレンはナチュラルな歌唱で、しかもコクがある。他の女性ブルース・シンガーに比べ全く遜色がない。

ウィーヴァーを取り巻くもう一人の重要人物が、ウォルター・ビーズリー。彼と組む際はスライドを彼に任せ、ウィーヴァーはバックに徹している。ヘレン・ヒュームズがヴォーカルの??などでも聴けるが、?「ボトルネック・ブルース」での、ウィーヴァーの飛び跳ねるリフに絡むスライドは絶妙。コンビでは、インストに加え、ウィーヴァーのヴォーカル、ビーズリーのヴォーカル(21〜24)各々がある。ウィーヴァーは自然なヴォーカル、ビーズリーは、年上じゃないかと思うほど老成した声を聴かせる。結局二人ともブルース史の奥に隠れてしまったのは残念至極。本盤で堪能するしか無いのだろうか。25.がラスト・レコーディング。よく張った声が妙に切ない。

<ギター・マガジン>の別冊で出ていた『ロバート・ジョンソンより前にブルース・ギターを物にした9人のギタリスト』の冒頭もシルヴェスター・ウィーヴァーだった。もちろん、ギター演奏を主とするブルースが全て彼の功績とは言えないが、ギターという楽器自体の魅力を通じたブルース表現へのヒントは、彼がもたらした部分が多くあると思う。

?Guitar Blues

?guitar rag

?Roamin blues

?Im Busy and You Cant Come In

?Poor Boy Blues

?Damfino Stump

?Penitentiary Bound Blues

?Cross-Eyed Blues

?Nappy Headed Blues

?Bottleneck Blues

21.Georgia Skin

24.Sore Feet Blues

25.Black Spider Blues