9月の読書記録

先月は先々月のリヴェンジを多少果たせたかな?それでもかつてのように読んだページ数がなかなか6千を越えないのが、われながらもどかしい。

2018年9月の読書メーター

読んだ本の数:17冊

読んだページ数:5791ページ

ナイス数:150ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly

トム・ソーヤーの冒険 (光文社古典新訳文庫)

男子ってかくも余計なことをせずにはいられないバカなお調子者なんだな…ということを改めて認識(笑)。特にベッキーの気を引こうとして大袈裟におどけてみせるトムの姿はあるある感ありまくり(苦笑)。それと同時に、解説でも触れているように、ネイティブ・アメリカンに対する差別意識が炙り出されているのが印象的。また、この当時私刑が公然と行われていたことを示唆する場面もあって、アメリカが孕んでいた暴力性が垣間見られる。後、登場場面は極端に少ないものの、冷静にその場の状況や兄の様子を観察する弟シドの存在が重要な隠し味かも。

読了日:09月30日 著者:マーク・トウェイン

https://bookmeter.com/books/5132357

■「動かない」と人は病む――生活不活発病とは何か (講談社現代新書)

廃用症候群という言葉に問題があるのは分かるが、生活不活発病というのも発語しにくいし、分かりにくいぞ…というのが第一印象(笑)。それはともかくとして、病人は安静にという考え方に問題があるという考え方には目から鱗。また、その考え方が未だに世間にはびこっているという事実に危機感を覚える。実際に介護に携わっている者として、リハビリについての考え方が改めさせられることに。ただ、現在の医療機関、及び福祉施設の中で、この考え方に則ったリハビリを実施することはかなり困難だという現実を認識させられる。まずは生活の場から。

読了日:09月27日 著者:大川 弥生

https://bookmeter.com/books/6723024

■勉強法 教養講座「情報分析とは何か」 (角川新書)

概ね興味深く読めたが、タイトルほど勉強法に特化した内容ではないというのが、個人的に何だかな…という印象が否めない。特に前半は現代の危機的状況やインテリジェンスについての解説で、この辺りに通じていない者にとってはいささか退屈。また、後半の勉強法にしても、一般の人間がいきなり実践するにはかなりハードルが高い。それに、現代の状況を生き抜く上で教養や勉強が必要なのがわかったが、一般社会に生きる人間が勉強で教養を身につけた先に何があるのか?について具体的に触れてないのも難点。ただ、数学には新たな興味がわいたけど。

読了日:09月25日 著者:佐藤 優

https://bookmeter.com/books/12741172

■嘘 Love Lies

他の人も述べている通り、5百頁強という大部にもかかわらず、一気に読了。こんなに先が気になってつい読み進めずにはおられない小説は久しぶり。かなりヘビーな内容だが、それを緩和するかのような秀俊と真帆との交流場面に思わず頬が緩んでしまう。恩と弱みに付け込んで秀俊を拘束する九十九の存在が何とも不気味だが、同時に憎めないところもある。こういう複雑な性格を併せ持った人物造形も著者の真骨頂かも。後、途中から人間臭さを発揮する近藤も印象的。ただ、かつての4人組の中でも亮介の末路があまりに悲惨なのがちょっと気になるけど…

読了日:09月24日 著者:村山 由佳

https://bookmeter.com/books/12484893

■国語ゼミ―AI時代を生き抜く集中講義 (NHK出版新書 554)

思ったよりも高度な内容。本書に掲載されている練習問題に実際に取り組んだ際、どれだけの結果を出せるか?と問われると正直かなり自信がない。とりわけ読解力と読書習慣は関係ないというくだりには、虚をつかれた思いがした。自分のこれまでの読書経験にどれだけの意味があったのか?と。それと音読の大切さを説いているのも目から鱗。速読の基礎は黙読だが、それも音読の積み重ねがあってからこそのものということか。そして何より衝撃的だったのが、武蔵中高の生徒のレベルの高さ。大学生どころか修士を終えた人間よりも高レベルではないか?

読了日:09月21日 著者:佐藤 優

https://bookmeter.com/books/12929875

■希望の介護―認知症を考える「中島塾」にようこそ

既知の事柄も少なからずあったが、介護に携わる者としては、身につまされること、気づかされることが多々あった。とりわけ驚かされたのが、この塾に参加する人達の意識の高さと知識の豊富さ。思わず我が身を恥じてしまった…それから、介護現場における様々な事例には、現場が抱える様々な困難や問題性を改めて痛感。それと同時に、そうした制約の中で何とかご利用者に向き合い、問題の解決、あるいは軽減を実践させる過程には、多少なりとも勇気を与えられる。特にベテランの介護士の対応に著者が「負けた」と実感するくだりが印象的だった。

読了日:09月20日 著者:中島 健二

https://bookmeter.com/books/9752611

■ギケイキ2: 奈落への飛翔

サブタイトルが全てを物語っているというべきか?映画の絶頂期が同時に悲劇の始まりだった。その悲劇の運命に抗う先の行く末は主人公も(何せ語り手でもあるのだから)、大方の読者もわかっているはずなのに、どうしてもその運命からの回避を願ってしまう…そして悲劇的ストーリーであるのにもかかわらず、ふざけているとしか思えない、その文体、様々な方言を多用した会話文はまさに前人未到の領域?もしかしてバフチンが喜びそう?てなことを考えてしまった。終盤での哀切極まりない静との別れはさすがに胸が詰まる思いがした。続編が楽しみ。

読了日:09月18日 著者:町田康

https://bookmeter.com/books/12936753

■世界の十大小説〈下〉 (岩波文庫)

上下巻を読了して一言。小説家というのは、かくも壊れてたり面倒臭い人間が多いものか(笑)。浮気、借金、家庭崩壊…などその手のエピソードに事欠かない。比較的常識人と思われるオースティンでも、そのまともさが故にどこか壊れているように思えてしまう…また、個人的にとりわけ印象的だったのは、ブロンテが男性的な性格であったということ。とりわけ飼い犬とのエピソードは強烈な印象を覚えた。後、モーム自身もそうであった同性愛について言及するときの心情を想像するという楽しみもある(?)。これを機に『戦争と平和』に挑戦するかな?

読了日:09月17日 著者:サマセット・モーム

https://bookmeter.com/books/411541

■世界の十大小説〈上〉 (岩波文庫)

以前から気になっていたが、実際に手にとってみたら、予想以上に面白さでほぼ一気読み。ただ、取り上げられている小説を実際に読んでいないと理解するのがちと困難なのが、惜しまれる。十大小説と言いながら、ある程度辛口の批評も織り交ぜているのは、「さすがイギリス人!」と思わせる(笑)。特に作品だけではなく、作者のルックスや私生活など、かなり下世話な話題に言及しているのが、面白い。個人的にはおそらくモームが強い影響を受けていると思われる、ディケンズの章がとりわけ興味深く読めたか。後スタンダールに対する辛口批評も印象的。

読了日:09月13日 著者:サマセット・モーム

https://bookmeter.com/books/411540

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (光文社古典新訳文庫)

前巻に引き続き、テンポ良い語り口に引き込まれて一気に読了…したものの(笑)、終盤トムが登場したあたりから、個人的にはかなり興ざめ。とりわけ、ジムの脱走計画を自分の冒険心を満たしたいために、あえて難易度を上げようとするトムの姿には、かなりイライラさせられた。このコこんなに面倒臭い奴だったっけ?と。実際、解説でのトムへの評価がかなり辛辣だったのに納得。それに終盤から急にご都合主義が目につくのも気になる。それはそうと、本巻でも今日でも抱えているアメリカの病巣がかなり伺えるのが興味深い。色々難癖つけたけど傑作。

読了日:09月13日 著者:マーク トウェイン

https://bookmeter.com/books/8128951

■空虚としての主題 (福武文庫)

以前読んだ『マス・イメージ論』と似ているなという印象を抱いたが、実際系譜的に連なるらしい。また、てっきり書き下ろし作品かと思っていたら、雑誌に連載されていたということに気づいて、いささか驚かされた。リアルタイムで雑誌に掲載された作品を毎回一つのテーマでくくってこれだけまとまりのある物を書けるとは…正直、その内容の十分の一も理解できているかどうか、怪しいのだけれど、著者独特の語り口に魅せられて読み進めていたという感じか。かつては同じような感じで吉本の信者になった人が少なからずいたんだろうな…と思わせる。

読了日:09月12日 著者:吉本 隆明

https://bookmeter.com/books/94885

ハックルベリー・フィンの冒険(上) (光文社古典新訳文庫)

まさかこの年で本書を手に取ることになるとは…だが、いざ読み始めてみたら、そのテンポの良いストーリー展開とハックの闊達な語り口に引き込まれて、殆ど一気に読了。それと同時に、黒人差別や、アルコール問題、児童虐待、銃問題…など今日のアメリカが抱える病巣のルーツを垣間見た思いがした。とりわけ18章における対立する家系同士の戦闘場面などは、アメリカの好戦的な気質の根深さに気付かされた次第。それと当時人間以下の存在とみなされていた黒人と交流することの意味、そのことが孕んでいた事情の複雑さに考えさせられることに。

読了日:09月10日 著者:マーク トウェイン

https://bookmeter.com/books/8128950

■神学の技法: キリスト教は役に立つ

「急ぎつつ、待つ」。本書で何度か繰り返されるこの言葉が、何かにつけ結論や結果を求めたがる昨今の風潮において、非常に示唆的。語り口は平易でわかりやすいのだが、内容はかなり高度で、特に神学書からの引用箇所はじっくり読む必要がある。個人的にはカトリックへの言及が耳に痛かったか。一信者として、その問題性についてある程度自覚的ではあるけれど、こうして鋭い舌鋒を突きつけられると、やはり下を向いてしまう。それでもカトリックの歴史的意義というのは、揺るがないと思うが。前巻と同じく、手元において繰り返し読む価値がある一冊。

読了日:09月08日 著者:佐藤 優

https://bookmeter.com/books/12772714

キリスト教と近代の迷宮

確かに二章以降の主題がキリスト教から離れて、「あれ?!」という感じに。特に2章の主題は科学ということで、ちょっととっつきにくかったが、概ね興味深く読めた。ますます閉塞感と混迷度が増している昨今。目先の情報に囚われ、地に足のついた所から俯瞰的に物事を捉えることができる人間が少なくなっているからこそ、こういう議論が意味をもってくる。確かに、反論や突っ込みどころはあるだろうけれど、それでも物事をラディカルに見る事の大切さが多少なりとも理解できるのでは?個人的にはイチローが起こした革命についての言及が面白かった。

読了日:09月06日 著者:大澤 真幸,稲垣 久和

https://bookmeter.com/books/12736294

■言い難き嘆きもて

本書が出て早十数年。その間に起こったことを大江はどう見ているのだろう?ということが今更ながらに気になる。そしてこの時点で自分を晩年者と自認していた大江が今の自分をどう捉えているのだろうか?と。本書で幾度となく言及される武満徹伊丹十三の他、これまでに幾多の盟友の死を目の当たりにしてきた筈。その死が自分にも確実に忍び寄ってくるという事実、そして何より最早初老を目前に控えた息子光の行く末。他人事とはいえ、長らくこの二人の姿を作品を通して見てきた者としては、知らずにおれない。また武満と光の音楽に新たな興味が。

読了日:09月05日 著者:大江 健三郎

https://bookmeter.com/books/212956

■イエスの父はいつ死んだか―講演・論文集

聖書学的な立場から聖書を読み込むことと信仰は果たして両立するのか?改めてそんなことを考えさせられた。今時、いわゆる逐語霊感説的立場から聖書を読む人は皆無だろうけれど、信仰を持つ者にとっては、ある程度そこに霊的なものを読み込むことが必要になってくる。その読みを実践しながら、聖書の歴史的背景や歴史的正当性を知るとはどういうことなのか?特に重要かつ難解なのは、イエスの復活。まさにクリスチャンにとってそこが信仰の肝であるが、実証できない。だが、絶対ないとも言い切れない。その謎を巡って今後も論考が重ねられる…

読了日:09月03日 著者:佐藤 研

https://bookmeter.com/books/623712

■小説の経験

前半もさることながら、後半の文芸時評は大江が同時代の作家達への評価をまとめて読めるということで、とりわけ興味深かった。それと同時に、当時は注目を集めていたものの、今や殆ど目にすることがなくなった作家がかなり多いのに、この世界で生きることの難しさを痛感。個人的には倉橋あたりへの評価が木になるのだが、ないものねだりか。それと前半で『戦争と平和』の主人公を道化として論じているのには、ちょっと驚き。これまで何となし敬遠していた『戦争と〜』だが、これを機に挑戦してみようか?という気に。大江の文学観を知るのに最適。

読了日:09月02日 著者:大江 健三郎

https://bookmeter.com/books/476416

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