彼と彼女〜ある夜のプロローグ

ManSide

それまで

女の子と付き合ったことがなかったワケじゃあない。

高校の時も付き合った子はいたし、

お互い違う大学に進んでしまっても

しばらくは続いていたんだ。

だけどむこうには、やがて同じ大学に

好きな男ができたみたいで

ハッキリそう言われたわけじゃないけど、

連絡も滞りがちになって、いやな予感がして

風の噂に、そう聞いたんだよね。

しばらくは、つらかったよ?

物理的に、同じ時間を過ごせないって

やっぱり大きいんだなって

すぐにほかの子に、なんて目がいかなかったし、

しばらくは避けてたんだ、

女の子を、そういう対象として見るのを。

気持ちがまだ受けつけられなかった。

やがて、時が流れて。

大学3年になっていたある日

キャンパスでふと見かけた女の子に、心奪われたんだ

奇遇にも、同じ学部の1年だった彼女を

それから時俺は見かけるようになる。

自然と目が追う。

笑顔が、超(?)かわいくって、飾り気がない。

何色にも染まっていない、

そのつやめいたストレートな、黒髪。

ひかえめなお化粧が、逆に意志を感じさせる。

個性の強い(いや、逆に没個性というべき?)周囲からは浮き立ち

それが却って人目をひくほどだった。

きっと、素直でいい子だろうと、俺の中で想像がふくらむ。

久しく忘れていた胸の高鳴り、

それだけで幸福感に満たされる日

だけど

ほどなくして就活が始まり、

大学へ足を運ぶ回数は極端に少なくなった。

たまに行けた日は、彼女を探し求めるものの

何故かあんまり会えなくなってしまった。

俺の中に焦りが芽生え、思いがつのる。

就職先が無事に決まっても、一方で心はふさいだ。

卒業するまでに、このキャンパスで

いったいあと何回会えるのだろう。

そんなことを思うと、もうどうしていいかわからなかった。

自分の気持ちにフタをして、

何事もなかったように卒業するのか。

ダメもとで、当たって砕けるのか。

それならば、後者だろう。

だって、彼女とはもう二度と

会えなくなるかもしれないんだよ?

だったら、一度だけ正面から思いきってぶつかろう。

それからまもなくして

キャンパスを、ひとり歩いてる彼女に

思いきって、俺は声をかけたんだ